60年以上前の面影が息づく、原田康子著「挽歌」の風景。
釧路市出身の小説家といえば、昭和のベストセラー小説「挽歌」などで知られる、故原田康子さんが先駆でしょう。原田康子さんの「挽歌」ゆかりの地はいくつもありますが、最初に目指したいのはやはり「幣舞公園」。そこには小説「挽歌」の碑があり、作中の一節、「高台から見降すと下町には明りがともっていた。しかし町の明りの果ては、広い真暗な湿原地に呑みこまれているのだった」が刻まれています。
直木賞作家、桜木紫乃作品の代表的舞台は「ホテルローヤル」
原田康子さんの「挽歌」を読んで小説執筆の道へと進んだ桜木紫乃さんも、釧路市出身の人気小説家です。釧路地方を舞台とする桜木作品は10以上を数え、各作品中に釧路市の風景や建物が描かれていますが、その中でも代表的な舞台といえるのは、やはり「ホテルローヤル」という名のラブホテルでしょう。2013年直木三十五賞受賞作の「ホテルローヤル」と「硝子の葦」にも登場しています。このホテルは桜木さんの実家がかつて釧路町で経営していたもので、現在は残っていません。しかし跡地周辺へ行くと、登場人物の男女が見たであろう、釧路湿原の風景を一望することができます。
渡辺淳一の「廃礦にて」は阿寒町雄別炭鉱が舞台。
札幌市出身の故渡辺淳一さんも、釧路にゆかりある作家です。「廃礦(はいこう)にて」の舞台となっている「Y炭礦病院」とは、釧路市阿寒町にかつて存在した「雄別炭鉱」の病院で、渡辺さんが新人医師だったころに体験した急患手術と、その時実感した女性の生命力の凄まじさが題材になっているといわれています。
幣舞公園/釧路市幣舞町。幣舞橋の南手、ロータリーから「出世坂」を登ったところ。
ホテルローヤル 跡地周辺/釧路市から国道391号を標茶町方面へ約20㎞。釧路町遠矢地区の「釧路陵墓公苑」と「特別養護老人ホーム」の看板から右折し、坂道を2㎞近く登って到着する平坦な場所。
雄別炭鉱 跡地/国有林内でヒグマの生息地であるため、現地まで行くことは危険です。釧路市から阿寒湖温泉へ向かう国道240号の、雄別地区同様の雄大な風景をお楽しみください。